貸席では席料を取らない

遊興の制度や慣習等は略大阪の花街と同じとおもへば間違ないがたゞ京都の貸席はどこでも席料を取らない。 席料などは普通で二三円、安ければ一円、高くて五円位のものではあるが、それを取らないところが矢張り京都は客を遊ばせるやうに出来てゐる。 遊興税も客からは取らない。 凡てが花代に含まれてゐて、しかも其の花代が東京などに較べるとぐツと安いのである。 だが「特別祝儀」となると東京流に簡単にはゆかない。 京都芸妓はどんなに惚れてるお客でも、客から金をとることを決して忘れない、相当な芸妓を自分の所有としておくには少くも年に四五千円の金が要るといふのは本当で、舞妓などに至つては正に『寸身これ金の権化』である。 馴染にならなければ遊んでも面白くなく、馴染となれば金のかゝる土地である。