百の百

或ひは『二百の三百』などいふ事も他国の人には一寸解しかねる花街用語で、近頃は多く東京風で女を御するに百円とか二百円とか言放つやうになつたが、古風なお茶屋では矢張り此やうな言葉を用ゐてゐる。 上の「百」は百円の意で、下の「百」は日柄百本といふ意味即ち「百の百」の芸妓といへば、特別祝儀百円に日柄を百本つけることである。 日柄は花五本(一本十五銭)になつてゐるから、日柄百は花五百本(七十五円)に当り合計百七十五円、それで月に三度逢ふといふのが最初の月の定めで、二筒月目からは先づ随意だが、最初の月は三度が限度基数としてある。 此へんの消息も東京あたりとは大分異つてゐる。