逢ひ状

貸席から芸妓へ客の来たことを通知する一定の用紙。 馴染客が来れば貸席ではすぐに予て印刷してある「逢状」に、客の名と相手の芸妓の名を書込んで、おちよぼをして芸妓扱席へ持たせてやる。 扱席からそれを芸妓の家形或は出先きへ届ける。 『××様ゆへ、はやはや御 越し待入候 潮見亭 ××殿』『××様御こしゆゑぜひすぐに 新町大鹿 ××どの』『××様ゆゑ 一寸にても御越しの程待入候 木本楼××殿』など、種々と仇な文句が書いてある。 芸妓はそれを帯の間へ挟んでその座敷へゆく。

此逢状の多きを以て妓は誇りとしてゐる。 電話といふ便利なものゝある世の中に、こんな物を廻してゐる所が大阪の色町のうれしい所で、逢状といふ名の艶めかしさ、殊にうれし。