女中の祝儀制度

料理屋に於ける女中の祝儀は客の任意になつて居るが、待合では女中の祝儀をも勘定書に入れて請求するのが常である、額は五十銭乃至一円で、余程大きな待合でないと二円は請求しない。これも一見甚だ不当のやうであるが、実は同じく客の便宜上から初まつたことで、東京では女中にチップをやらぬ客は殆んどない、自ら與るとすると豈夫五十銭や一円もやれない場合が多い、試みに大きな料理屋で女中に一円のチップを出して見給へ、決してろくな顔をしまい。然し勘定書に入れて請求されゝば夫れで済んでゆく。慣れゝば却つて便利で安直な制度なのである。−但しその家の格、女中の労の多少、及び己れの身分等をも考慮して、請求される祝儀以外、尚ほ若干の心附を与へることは、心ある遊客の時に忘れてならぬ所であらう。