新・柳二橋を以て東京の代表的花街とすることは、おそらく何ん人も異論のないところであるが、花街にも等級があるか? その規模、妓品、客種、出先である料理店・待合の善悪、花街気分等の上から考慮して一流二流乃至四五流の別なしとは言へぬ。仮に有矣として考へて見やう。旧市街の花街は課税率を標準として左の如く五等八級に区別されてゐる。
これは勿論「参考」だけのものである、課税率や玉祝儀の多寡を以て上下を定める訳にはゆかないが大体に於てさう的を外れて居るとも思へぬ、下谷は赤坂の次へ、日本橋と伍せしめて宜しかるべく、神田、天神、芝浦を九段、霊岸島の後へ据えるのは些か気の毒であらう。新市街地では渋谷、五反田、大井あたりが何と言っても白眉で、二等地の乙といふ見当であらう。
しかし、結局は各自の主観に属する問題であるから、余り詳しく而して判然云はふとすると異論百出するであらうことをおそれる。
山の手は山の手として、下町は下町として、概括的にその花街気分を異にして居る上に、同じ下町でも新橋、柳橋、日本橋、芳町、下谷、浅草、深川その他それゞ異った匂ひと彩りを帯び、山の手でも赤坂、神楽坂、富士見町、四谷荒木町、白山等亦決して同じ気分でなく、場末の新開地には新開地気分があって、それゞ多少異った情調を有ってゐる。「遊び」の面白味は自づからその間にありと言はん。