渋谷の芸妓は泥くさい、などゝ田圃そだちの鰌あつかひにされたのは少くも十数年前の話で、今日は市内三流どころの花街に此して遜色はないが、彼の震災後の大繁昌に際つて、確実にその機運を掴み得なかつたところに、底力の足りいなことを示してゐた。
円山雑詠(詠人しらず)
○秋ちかしこうぽうの湯の煙突に、夕日あかあかと暮れてゆく宵。
○わびしさは神泉くわんのよるの雨、はなれ座敷に爪びきを聴く。
○見るからにあなすがすがしぽん太郎の瞳の中にぞ秋は棲むらし。
○歌まろの絵に似るてふも仇ならじ、今奴こそはなまめきて見ゆ。
○ニックネームをがちやヽといふいてふにも恋はあり鳧女也けり。
○峰松ののろけ話など聴きをれば、心がつかれるこれわいさのさ。