渋券

芸妓屋 約一〇〇軒。 芸妓 約三〇〇名。 料理屋二〇軒。 待合一六〇軒。

代表的料亭は神泉館。 有明(ユウメイ)館。 次で松風(ショウフウ)。

同じく待合では 茂の屋。 立花。 もみぢ。

芸妓屋では大ゑい、春本、栄家、夢三升などが昨今羽ぶりのよいところ、芸妓では一好の平三、その妹である平代一好の正子、菊新藤の亀松、春福の家のぽん太郎、峰新美代の峰松、福栄家のいてふなどを挙げやう、いづれも士地では姐さん株、殊に糸と唄の平三、踊の正子、この二人は真実の姉妹で顔はあまパッとしないが山の芸ごとにかけては無くてならない妓だ、ぼん太郎の若い頃は美しかつた、峰松といてふはガラヽして気さくな所が座持によろしく、いてふが半玉時代の阿呆陀羅経は渋谷の一名物だつたが、今は最早あまりやらぬらしい。

芸妓の玉代は一本二十五銭、一時間は二本、玉敷五本(二時間半)を以て一座敷とし、あと口は二時間となつてゐる。 祝儀二円、箱丁五十銭。 —即ち二時間半三円七十五銭。 小芸妓は一本十五銭で、祝儀一円五十銭、箱丁五十銭、合計一座敷(二時間半)二円七十五銭。 ○○外は七・八円といふところ。

待合の席料は一円五十銭乃至三円を止りとしてゐる。