花街名物「盆踊」

芸ごとには割合ひ力を入れる土地で、郊外の新花街としては常に群を抜いてゐたが、一昨年頃から始めた「盆踊」は、大東京五十余の花街のトップを切つて、今は此地の一名物となつた。 毎年七月中旬一週間ばかりを期して、券番わきの空地に音頭櫓を設け、揃ひの浴衣で盆踊をやつて一般に公開し、飛入随意で踊りたい者には一緒に踊らせる。

花の五反田、どなたもおいで、ヨイヽ

招ぐ柳の立姿、チヨイトヽ、招ぐ柳の立姿。 コリヤシヨ、ヨイヽ。

月の五反田、どなたもおいで、招ぐ尾花の色くらべ。 (以下囃子同じ)

雪の五反田、どなたもおいで、つもる話があるわいな。

歌詞も踊りも、極めて平易に大衆的なところが中つて、人気を博したのである。