「大森新地小唄」—平山蘆江作詞、清元延葉蔓壽作曲、花柳総之助振付。
オヽサヨイヽ、よい汐先だよ。 浜は見晴らし、三原の新地で、
ちよいと見染めたあだ姿。 どうしたえ。
オヽサヨイヽ、よい夢見たかよ。 浜の夜明に、浪間のきぬヾ、
ちよいと鳴いたはあれア鴎。 どうしたえ。
オヽサヨイヽ、迫手の白帆は。 下田がよひか、通うて見る気は、
ちよいと新地の観世音。 どうしたえ。
オヽサヨイヽ、寄来と八幡に。 バスがとまつて、あなたの姿に、
ちよいとよく似た男ぶり。 どうしたえ。
オヽサヨイヽ、よい月見るなら、都新地の、浜手の座敷地、
ちよいと爪弾きさしむかひ。 どうしたえ。
オヽサヨイヽ、よい事聞ことて、しびの大森、東京みやげは、
ちよいとこゝから海苔の味。 どうしたえ。
オヽサヨイヽ、三原の眺めは、羽田、横浜、あの火は上総か。
ちよいと洲崎ヘ一またぎ。 どうしたえ。
此の唄、よく都新地の情調を歌ひあらはしてゐる。 秋多よりもこゝの生命は夏にある。