大木戸気分

大木戸気分を語るほど無論詳しくは知らないが、さうだね斯んな風に言はふか、『場末の新開地気分を味ひたいと思つたら、何も調布だとか新井あたりだとかまで出かける必要はないよ、大木戸へ行きたまへ、芸妓と銘酒屋の女との合の子のやうな妓が居り、待合と銘酒屋の中間地帯に居るやうな家が沢山ある、さうした一種の情調も時には君おもしろいものだよ』とね。 然し決して、大木戸芸妓の全部が、或ひは待合の全部が、さうした女であり家であるといふ訳ではない、慎つて呉れ勿。